コラム
ナヨナヨサガリゴケ
こんにちは。志學舎本部の岩田です。
先日、山岳ガイドの方に案内していただいて富士山の麓にある山梨県の山中湖のそばにある大平山(おおひらやま:標高1295m)に行ってきました。そのガイドさんから教わったお話。
紅葉が鮮やかで清々しい空気の中のトレッキングでしたが、道中でメンバーが盛り上がった話題がこれ。歩いていると至る所にカラマツの木に出くわしましたが、その木の幹に見つけたのがこの「ナヨナヨサガリゴケ」。見た目の通り「ナヨナヨ」として木にぶら下がり(サガリ)生きている「コケ」のこと? これ、冗談ではなく学術的な正式名称なのです。
<山中湖近くで見つけたナヨナヨサガリゴケ>
理科の生物分野で植物の分類を習いますね。名前に「コケ」がついているので「コケ類」かと思いきや、これがそうではない。実は「菌類」が「藻類」を取り込んで共生体となった「地衣類」(ちいるい)という特殊な菌類の一種。
菌類(きんるい)
代表例:キノコ、シイタケ、カビ
特徴:木や落ち葉などに寄生して、そこから水分や栄養分を吸収して成長。
藻類(そうるい)
代表例:ミドリムシ、海藻(ワカメ、海苔、昆布など)
特徴:光合成を行い自ら栄養(炭水化物)を作り出して成長。主に水中を漂って生息。
両者に共通する悩みは単独では生活できないこと。そこで、一体化してお互いの長所を提供しあうことで互いの短所を補うことに。
このように両者が一緒になって助け合って単独で生きる「地衣類」という独特の道を選択したわけです。
木の幹や岩の表面についている独特の模様をよく見かけますね。濃い緑色をしたコケ類などと混じって見える、表面にこびりついたように見える薄い緑や白っぽいのがそれです。
<岩の表面の地衣類>
食用の「岩茸(イワタケ)」や、理科の実験で使うリトマス紙の「リトマス」などが代表的な地衣類です。高い山の岩肌やツンドラ(北極や南極近くの永久凍土に覆われた寒い地域)など、生物にとって最も厳しい環境にあってもたくましく生き延びていることから「地上最強の生物」とも呼ばれているそうです。
そんな「地衣類」の中に、冒頭で紹介した「ナヨナヨサガリゴケ」があります。この「ナヨナヨサガリゴケ」、実は環境庁が「絶滅危惧I類」のレッドリストに指定していて、現在、日本では、この山中湖周辺と、北海道の阿寒湖、根室の3か所でしか確認されていない希少種なのです。
(参考)環境省レッドリスト2020 https://www.env.go.jp/press/files/jp/114457.pdf
(リストの124ページに「ナヨナヨサガリゴケ」が掲載されています。)
ちなみに、これによく似たものとして、山に行くと木にぶら下がっている「巨大なとろろ昆布」みたいなものをよく見かけますが、これは「サルオガセ」といって別物。でも、これもまた「地衣類」です。
<サルオガセ>
詳しくは国立科学博物館の下記ホームページをご覧ください。
<地衣類について>
https://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/chii/index.html
<ナヨナヨサガリゴケについて>
https://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/chii/05/zchii019.htm
【突然ですがここでクイズ!】
絶滅危惧種の「ナヨナヨサガリゴケ」が見られるのは日本では山梨県の「山中湖」と北海道の「阿寒湖」ほかと書きましたが、同じくこの2か所でみられる、もう一つの絶滅危惧種があります。それは何でしょう?
(ヒント:先の「環境省レッドリスト2020」の119ページの絶滅危惧I類の最初の方に答えがあります。) 答えは次回に。
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